2011年12月21日水曜日

「龍」という字の生まれた時代的背景

「龍」と言う字が漢民族の心中に深く根ざした架空の動物神であることは前報で説明をした。それでは、字が生まれた時代的背景について少し掘り下げてみよう。

金文の「龍」
当時の生産方式の変化は漢民族の
意識の変化を生み、その変化は「龍」
という漢字を生んだ?
 この文字が生まれた時期は、まさに天に依存した飯を食べる型(つまり穀物の栽培)の農業生産方式が急速に発展する段階である。また華夏民族の諸侯国は残忍な戦争を通じて、統一していく段階に入っていた。ゆえに人間を超越したした力を持つ龍、天候を操ることができる龍神信仰が生まれたのではないだろうか。

 そして、この字は金文から発展するにつれ、次第に皇帝の権力を象徴する存在へと変化を遂げていく。
 龍の字の大篆から小篆の発展は力強く気勢のある調和の取れた美観を体現している。この種の龍の字の右半分の躯体はさらに長く変わり、湾曲する必要にいたるまでになっている。左半分の形態もさらに奇異な形状になって、字形は対象になり、一種の落ち着きとしっかりした感じさえ出ている。庶民性は少なくなり、次第に皇帝の権力、帝王の専用のシンボルに変化していった。
 
 龍の字は原始民の間に恐れおののく意識の中で、古代民衆の現実生活の中で作り出されたものである。龍が一種の偶像になった時、それは自然界の動物の複合体と異なるものを持っていた。


   牛の耳、トラの手、鷹のつめ、蛇の体、魚の鱗。龍の形の龍の字は同じで、完全に一種の仮想で、しかしながらそれは非凡にして突出して、空に掛かる人間界を超越した気勢、奇異にして言語を超える、奥深く計りしれない威力、漢民族に対して語り告げる、子々孫々までの無限の吸引力をもち、為にこのような龍は中華民族の象徴になりえたのである。

2 件のコメント:

  1. 私見をお赦し下さい。「竜」は古字と聞きます。「立」の下一文字は人が立つ大地、地平。その下に「日」が沈めば夜を支配する「音」。「闇」にも「暗」にも通じます。したがって「竜」とは地の下に埋もれる長尾の生物、すなわち恐竜化石の象形と考えます。
    「龍」も偏は地下にある肉月、生物の存在を示していますが、旁に伴う形象によって権威化された、これが後世の造字であることはうなずけます。「竜」を「龍」の略字のように思う人が多いのは、後者が表す架空の聖獣のイメージが、出発点であった恐竜のそれを駆逐して一般化してしまったということでしょうか。
    そこでお教え頂きたいのです。「竜」は殷代の甲骨文などに刻まれた文字と承知していますが、あらためて荘厳なイメージを付加した「龍」はいつの時代の造字なのでしょうか。

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  2. 高取様
    貴重なコメントありがとうございました。蔵書の中に、ご質問に対して、ぴったりと思われる部分が見つかりましたので、殆ど生のまま引用させて頂きます。
     引用は「漢字の成り立ち」(P33、落合淳思著、筑摩書房)の【】の部分です。

     【ただし、新字体の「竜」は形を崩した俗字を用いており、「立」以外の部分は失われている。竜 ( 龍 ) に限らず、新字体は成り立ちよりも筆書の容易さを重視して俗字を使っていることが多く、その場合には字形の構造自体が変わってしまうこともある。なお、本書は新字体を用いているが、必要な場合にはカツコ内に旧字体を挙げる。
    「竜 ( 龍 ) 」は想像上の動物であり、蛇を神格化したものである。「『本文の中の枠の中の右から二つ目 』の記号のうち、「頭の逆三角の下部 」の部分が蛇の側面形であり、「頂部のが逆三角」の部分が冠を表している。古代中国では、貴人は冠をかぶっており、甲骨文字では高貴な存在の象徴として使われている。つまり、竜の字形は「高貴な蛇」を表しているのである。この文字も楷書にまで継承されており、旧字体の「龍」のうち、「立」の部分が冠であり、「月」のような形は蛇の側面形の頭部にあたる。】

     尚「漢字源」(藤堂明保編、学研)の1860ページにも「龍」は「竜」(常用漢字)の旧字であり、現在では旧字の「龍」は人名にだけ使用が認められていると書かれています。

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